本 中島岳志 『「リベラル保守」宣言』




・当時(1990年代半ば)は、戦後民主主義批判が高まっており、左翼への
 激烈な反発の文章がもてはやされ始めていた。そこでは極めて短絡的な
 左翼批判が繰り返され、リベラルな精神を足蹴にする議論が溢れていた。

 私は、この「反左翼」の議論に強烈な違和感を覚えた。彼らは「左翼の反対側」
 たることで自己のポジションを確認する「逆説的な左翼へのパラサイト」ではないかと
 思った。

・急進的な改革は、常に他者を退けた独断に依拠する。それに対して、漸進的な
 改革は、異なる他者との対話を通じた合意形成を前提とする。

・「左翼」という思想を最大公約数的に定義すると「人間の理性によって、理想社会を
  作ることが可能と考える立場」ということが言えるだろう。(中略)
 人間の努力によって、世の中は間違いなく進歩するというのが、左翼思想の
 根本にある発想だ。

・そのため、社会民主主義は往々にして「テクニカル・ナレッジ(技術的知)」に傾斜する
 傾向がある。彼らは、技術の適用によって問題は解決すると考える
 「ポリティカル・エンジニアリング(政治工学)」を重視し、人間社会の複雑さや
 歴史の継続性を軽視する。

・保守思想は「人間の理性によって理想の社会を作ることは不可能である」と考える。

・保守は特定の人間によって構成された政治イデオロギーよりも、歴史の風雪に耐えた
 制度や良識に依拠し、理性を超えた宗教的価値を重視する。

・人間は過去・現在・未来においても不完全な存在であり、不完全な人間が構成する
 社会は今後も完成することはない。

・永遠に問題が起こり続ける社会で、人間にとって重要なことは
 1.変化に対する覚悟を持つこと
 2.堅持することの沈着さを持つこと
 3.変えるべきことと変えてはいけないことを見極める知恵を継承すること

・本質的な議論とは、相手を打ち負かすことではない。相手の言い分に理があると
 認識した際には、その見識に配慮しつつ、着地点を探ることが議論の本質である。
 ここでは、歴史に支えられた経験知に基づく平衡感覚が威力を発揮する。相手と
 自己の差異の間で平衡を保ち、自己変容に伴いつつ合意を生み出すことこそが、
 社会的存在である人間の英知である。

・保守派は、多くの人間が蓄積してきた社会的経験知を重視し、漸進的な改革を
 志向する。革命のような極端な変化を志向する背景には、必ず人間の理性・知性に
 対する驕り・傲慢が潜んでいるため、保守派はそのような立場を賢明に避けようとする。

・人間が不完全な存在である以上、人間によって構成される社会は永遠に不完全で、
 人間の作り出すものにも絶対的な限界が存在する。

・人間の不完全性を冷徹に見つめる保守思想に依拠する以上、原発という
 過剰な設計主義的存在には懐疑的にならざるを得ない。

・原発事故は広大な国土を台無しにし、そこで歴史的に積み重ねてきた
 先祖の英知を根源的に破壊する。長年の間、有名無名の日本人によって
 継承されてきた伝統や慣習が、一瞬にして消滅の危機にさらされる。
 保守派であれば、そのような事態を全力で阻止し、命を懸けてでも
 死守しようとするはずだ。

・「左翼が反原発を唱えているので、反対のことを言うのが保守」というアンチの
 論理を乗り越えるべき。原発論争が日本の保守が左翼へのパラサイトから
 抜け出し、思想としての保守を探求するきっかけになるべきだと考える。

・人は、他者との関係性の中に存在している。この関係性が断ち切られ、
 社会を失ったとき、人はアイデンティティを見失う。「自己が他者から必要と
 されている」という実感が、人の実存を支えている。

 生活保護政策で重要なのは、受給者を社会や共同体と接続させ、その中に
 包摂することだ。他者との関係性を構築することによって孤独から解放し、
 働く意欲を引き出すことである。

・共同体や社会関係の重要性を説いてきた保守派こそ、中間的就労政策に注目し、
 積極的な施策を進めるべきではないか。生活保護バッシングや「家族の力」の
 強調によって社会を崩壊に導くよりも、「自助」の力を引き出す「共助」
 「公助」を進めることで、社会を再建することのほうが重要だと考える。

・いま取り戻すべきなのはトポスだ。他者との立体的で有機的なつながりを回復し、
 中間共同体を厚くしなければならない。社会的包摂を強化しなければならない。
 地域における相互扶助の関係を再構築しなければならない。


テクノロジーの発達によって人間社会のもつ様々な問題は
乗り越えられる、という思想に保守派は懐疑的な立場をとる。

最近良く考えるのだけど、「明日には技術も進歩しているはず」と
テクノロジーの進歩を無条件に、脳天気に考えられる、
あの幼児的な無邪気さはどこから来るのだろう。

左翼へのパラサイトとは、突き詰めるとルサンチマンの
克服が出来ていないということ。
左翼を馬鹿にする俺カッコいい、という底なし沼から
早く脱出しないと、人生の大切な時間を無駄にすることになる。


救世主なんて現れない。
先人の知恵を借り、少しずつ進んでいくしかないんだ。


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[ 2013/09/22 21:20 ] 本・マンガ | TB(0) | CM(0)

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