小説 乙川優三郎 『五年の梅』





五の短編集。
表題作以外は江戸の町人が主人公。

良かったのは「後瀬の花」と「小田原鰹」。
前者は店の金を盗んで女と駆け落ちし、後者は
あまりに世に対する呪詛を吐き続けるが故に女房と子供に逃げられる。

両作とも男は世間が悪い、俺は悪くないと主張し
その姿に女は愛想を尽かす。
物語の最後には自らの愚かさに気づくが
無くしてきたものの多さを心底悔いる。

後悔したところで終わる前者と最後に善行を積む後者。
同じテーマなのに対照的。


「小田原鰹」 116頁

「喜びや怒りの対象が違うから、夫婦で同じ感懐を味わうこともなかった。
 自分がどう工夫し、どう歩み寄ったところで、鹿蔵は変わらないだろう。
 早い話が、人並みに花を見て美しいと思うおつねと、何の役にも立たないと
 思う鹿蔵とでは、自ずと見るものが違ってしまう」


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[ 2015/08/20 22:29 ] 本・マンガ | TB(0) | CM(0)

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