本 森山 優 『日本はなぜ開戦に踏み切ったか』




Amazon.co.jp 森山 優 『日本はなぜ開戦に踏み切ったか』


日本の意思決定システムは「船頭多くして船山に登る」状態だった。
何か有効な解決策を実行しようとしても、誰かが強硬に反対すれば、
決定できない。まさに独裁政治の対極であった。

効果的な戦争回避策を決定することができなかったため、最も
ましな選択肢を選んだところ、それが日米開戦だったという事実である。

陸軍は中国から撤兵すると利権を失うのでやりたくない。
しかし撤兵しないと日米開戦は避けられない。
陸軍は海軍が、海軍は陸軍がアメリカと戦うと思っていた。

結局、組織的利害を国家的利害に優先させ、国家的な立場から
利害得失を計算することができない体制が、対米戦という
危険な選択肢を浮上させたのである。

開戦派だった東条英機を首相にすることで軽率な行動が取れないよう
自制させる、動きを封じる。

アメリカに武力で勝利する手段がないことを自覚しており、
開戦となったら日本人の精神力と国際情勢が有利になることを
当てにするしかない。
希望的観測を根拠とした判断停止の産物だった。

しかし、ほんの少し長期的な視点をもてば、仮に現有戦力で日本が短期的な
勝利をおさめたとしても、数年後には圧倒的な大兵力を揃えたアメリカに
惨敗する可能性が高いことに、思い至るはずである。戦うなら、最も条件が
有利な時に戦いたい、作戦担当者がこのような作戦至上主義に陥るのは、
当然の側面もあるが、問題は長期的視野に立ってそれを抑える政治の力が
欠けていたことだった。

東条首相は決して戦争そのものに反対だったのではなく、外交交渉を
ないがしろにして何が何でも戦争に向かおうとする陸軍の姿勢に対して
不信感を抱いていた。戦争に至らずして外交交渉で話がまとまれば
御の字と考えるのは、政治に責任を負う者にとって当然である。

一方でこれまで陸軍がやってきたことは、謀略、中央政府の統制を無視した
軍事行動、テロに内乱など、きわめて無秩序な行動ばかりだった。

アメリカは日本の外電情報をほとんど解読しており、甲案が成立しなければ
乙案に切り替えるという二段構えの作戦が筒抜けだったため、ハルは
甲案を交渉の対象としなかった。

ハルが突然方針を転換した理由は未だ不明。一説にはスチムソン陸軍長官から
日本軍が大船団を南下させ、台湾の南方まで達していると報告されたからだと
されているが、この報告は勘違いに基づく過剰反応だったとされている。

ハル・ノートを歓迎したのは、陸軍を中心とする開戦論者たちであった。
東郷外相のシナリオ通りにアメリカが妥協の姿勢をみせたら、日本に深刻な
分裂をもたらしたであろう。アメリカが譲歩を小出しにしてくれば、日本は戦争に
踏みきれず、戦機は失われる。そうなれば、アメリカは全く血を流さずして
目的を達成できたに違いない。それこそ統帥部が最もおそれたシナリオであった。
アメリカは、そのような老獪さよりも、原理原則を守ることを選んだ。大国が故の
自信に基づいた判断であった。

つまり、戦争、外交ともに悲観すべきところを楽観していた。換言すれば、日本の
指導者たちは、不都合な未来像を直視することを避けたのである。

つまり、内的なリスク回避を追求した積み重ねが、開戦という最もリスクが大きい
選択であった。


現在でも2020年開催の東京オリンピックにまつわるゴタゴタが起こっている。
まるで成長していない。
いや、計画が白紙撤回されたのだから、少しは進歩しているのか。

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[ 2015/09/09 22:49 ] 本・マンガ | TB(0) | CM(0)

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